コラム




キャリア支援センターでは、センター員やゲストによるコラムを掲載していきます。

Career Column Vol.6 
憧れのアンサンブルピアニストとして  〜人との繋がりが人生を左右する!〜
久下未来さん(ピアニスト 管楽器科嘱託伴奏員)

「とにかくアンサンブル が好き」というピアニスト・久下未来さんは、
主に管楽器奏者と共演する忙しい日々を送っていらっしゃいます。

漠然としていた将来像

Q 在学中、そして 卒業前後には、将来についてどんなふうに思い描いていましたか?

伴奏やアンサンブルに高校時代から興味があり、アンサンブルピアニストへの憧れが強くありました。

でも研究科に進学するまでは、音楽教室講師など、ピアノに携われる仕事に就けさえすれば…と、漠然とした考えしか持っていませんでした。

また、大学時代は軽い気持ちで教職課程を履修していましたが、教育実習で現場を体験してから教職にも興味を持ち、進路として視野に入れたりもしていました。

Q 今やっているお仕事にたどり着くまでに、どんな道のりがありましたか?

アンサンブルピアニストとして、演奏で収入を得て生活できることが一番の希望でした。でも学校や団体などの専属伴奏者の公募は大変少なく、また音楽の就職ガイド等にも参考になる情報がほとんどありませんでした。その職業に就くための道筋やゴールがどこにあるのか、目指し方すらもわからない状態でした。

研究科1年目の終わりに、桐朋の管楽器・打楽器・ハープ部会の嘱託演奏員の公募があり、実技試験と面接を経て採用して頂きました。その際の共演者は既に知り合いで一緒に演奏したこともあり、審査される先生方も日頃からお世話になっていた方ばかりで、人との繋がりの大切さを実感しました。

Q お仕事を始めたころに苦労されたことはありますか?

しばらくは学業と仕事の両立で苦労しました。

技術的な面でも、ピアノソロの曲を演奏する時と、まるで異なる楽器のように音を扱わなければいけない場面が多くあります。一緒に演奏していた友人・先輩・後輩、レッスンして下さった先生方の助言や、現場でのお話は、当時の私にとって何より貴重なものでした。

Q 現在の生活、音楽活動の内容についてお話しください。

桐朋学園大での嘱託演奏員と、上野学園大学・同短期大学部での伴奏要員としての勤務が主です。その他、セミナーやコンクール、オーディションの伴奏、リサイタルの共演などの活動もしています。

先日は地方の音楽高校で、伴奏の公開講座をしてきました。

図書館通い、所見大会、そして音楽談義

Q 学生時代の、どんな経験が今に生きていますか?

沢山の演奏会に足を運び、図書館を毎日のように利用して次々と新しいものに出会えたことは大きいと思います。桐朋の図書館には入手困難な絶版品から最新の資料までが揃い、所蔵数はもちろん貴重度でも世界に誇れるほどです。積極的に利用して、沢山のお気に入りと出会って欲しいと思います。

桐朋は室内楽の通年のシステムもすごいですよね。私は、結構無理して詰め込んでいました。そのときのレッスン内容を今でも思い出すことがあります。またその当時教えて頂いた先生と仕事の場でお会いするようなことがあると、改めていろんな方との繋がりが大事だと感じます。

学生時代に様々な音楽に触れたことで知識や興味も増え、素晴らしい友人と出会うきっかけにもなりました。顔を合わせれば初見大会や、音楽談義が始まっていた時間も、間違いなく今の音楽生活の基盤の1つです。

学ぶ意欲があれば、先生は応えてくださるし、自分で課題も増やせます。いくらでも勉強しようと思えばできるのが学生時代です。逆に音楽に興味をちょっと失うと、いくらでも置いていかれてしまうという怖いところもありますよね。

様々な進路

Q 卒業して7年ほど経った今、同級生たちはどうしているかご存知ですか?

大学一年生の時点で、企業に就職することを決めていた人もいて、しっかり働いています。留学中の人も、これから留学する人もいます。

それから、違う道に進学して、慶応の哲学科とか、早稲田の政治経済で勉強中の友達もいて、そんな大変な勉強の傍ら演奏活動をしている人もいます。

とってもヴァラエティ豊かな学年だったなと思います。一旦仕事を始めたけれど、ふたたびレッスンに通ってコンクールやオーディションを受けるという人は、管楽器に多いかも知れません。

Q 最後に、在校生へのメッセージをお願いします。

学生時代からの知り合いが各地でオーケストラ団員として活躍していたり、何ヵ国語も操って海外で音楽活動を続けていたりしています。

また、作品を出版したり、教師として後進の指導をしたり、という仲間もいます。毎日のように会っていた友人たちと、今は憧れの音楽家として、時には仕事仲間として付き合うことが多くなりました。

私もまだ経験が浅く、学生時代にお世話になった憧れの先生方には到底及ばない存在ですが、音楽の世界では、人との繋がりが人生を左右するほど重要であることを理解し始めました。

何気なく顔を合わせている、周りの人とのご縁を大事にして欲しいと思います。



実感のこもったメッセージをありがとうございました。 学生時代から綿々と続くいろんな人との繋がりが、現在の仕事に通じているというのは、演奏を続ける人の多くが感じていることだと思います。久下さんは管楽器の嘱託演奏員も勤めていらっしゃるので、これからも学内で多くの学生さんがお世話になることと思います。

ところで、桐朋の図書館の素晴らしさは、学生時代には分かりにくいかもしれません。これだけでも桐朋に行って良かったと思えるほど、利用価値は絶大です!
2015年11月

インタビュアー・文責 大島路子