コラム


さまざまな道へ進んだ卒業生や先生方、各方面のプロフェッショナルへのインタビューを掲載しています。

写真 Career Column Vol.9 

  中 奏 なか かな さん (ヴァイオリニスト)


 

〜自分の色を探してみよう〜


まわりが上手すぎて「天空レベル」

桐朋って、国際コンクールで優勝している人や、すでにCDデビューしている人が普通にいて、「この人たち、教えてるのかな」というくらいのレベルですよね。大学一年めは、楽しくてウキウキと過ごしていました。でも二年めになるころから、まわりと自分のレベルに圧倒的な差があることを実感し始めて、それをずっと心の底にモヤモヤと抱えていました。努力すればうまくなるのは分かっていたけど、「超えられない」というのは明らかでした。

卒でお支払い出来る範囲でお願いしようと思ってのことです。この動画をユーチューブで配信したところ反応がよくて、コロナも長引きそうだということで、次は10巻までを、私と新しい先生の二人で分担して、毎日撮って出しました。秋までに全部アップロードしたところで、チャンネル登録者が100人程度まで増えました。

ユーチューブはチャンネル登録者数が1000人になると収益が出ます。せっかくなのでそこを目指そうということで、今度はおしゃべりや、アンサンブル動画を載せたりしていくうちにだんだん欲が出て、登録数一万人を目指そうということになりました。そのころ音大受験の様子を3分のコントにして出したのですが、急にプロオケの先生から、「みてるよ」と言われるようになり、気づいたら今の状態になっていました。計画は1割だけ、あとは運だったと思います。

賛否両論あるのは覚悟の上

目指しているのは、クラシック音楽ってどんなものだろうと思っている人に入口を作ることです。プロの演奏に興味を持ってもらって、この人たちがやっていることは意外と身近なんだなと思って、安心して観て欲しいです。

今の活動につながった気がします。

その色は簡単には見つかりませんが、人に言ってもらえる褒め言葉、それも身内だけでなく、違う業界や立場の、お互いの接点がない複数の人からの評価に、ぜひ耳を傾けてみてください。私の場合は、コンサートや学園祭でMCをやった時に、違う環境のいろんな人に「話すのが上手だね」と言ってもらった経験が、今につながっています。

今仕事をする際にいつも自問しているのは、今自分のやっていることが下品でないか、これによって誰が傷つくのか、誰が助かるのか・・・ということです。こうしたことについてまた、桐朋で出会った師といつも心の中で会話をしています。そして、社会とより密接につながった音楽の在り方についても模索しながら、これからの活動の方向性もみつけて行きたいと思っています。

2022年2月