留学生便り Vol.3 ヴュルツブルグ音楽大学
by 森園 康香さん(Vl.)
世界各地で勉強している桐朋出身生に、現地の声をききます。
第3回は、ドイツのヴュルツブルグという街にある、
ヴュルツブルグ音楽大学Hochschule fur Musik Wurzburg
に留学されている、森園 康香さん(Vl.)にお話を聞きました。
彼女は桐朋女子高等学校音楽科を卒業後、2011年よりBachelor Kunstlerisch(大学 学士過程)で勉強しています。
− 入試の準備や手続きはどのように進めましたか?
申し込み期限は大体3月です。
学校のホームページに書いてありますが、勿論日本語での説明は無いので書類を揃えるのが大変なので、私は12月頃から準備しました。
入試は6月でした。
語学は学校によって違いますが、私の場合は中級以上が必要でした。
ドイツの語学学校の証明書があれば大丈夫です。
ドイツ語学校には日本で2年程通いました。基礎文法は日本で頭に入れておけると大分楽です。
多くの人が、入試前の2月~4月頃までに自分が行きたい学校の先生に、メールなどで直接コンタクトを取ります。
ドイツ人は大体英語も話せるので、英語でも大丈夫。メールアドレスは大体その学校のホームページに載っています。
演奏を聴いてもらい、入試に通りそうか、また先生の門下に入れるかどうか、意見を伺います。(レッスンではないのでレッスン代は要りません)
以上のことを、複数の学校でやっておくと安心です。大抵、滑り止めにいくつか学校を受験します。
日本の大学と違って、自分の習いたい先生が生徒を取れない場合に、入試に受かっても学校に入れない場合があります。
先生が持てる生徒数に限りがあるからです。
その為に事前に先生とコンタクトを取るのは必須です。
私はヴュルツブルグの街に知り合いがいてかなり助けてもらったので、そんなに困ったことはありませんでしたが、来たばかりで語学があまり出来ない状態で書類の手続きなどしなければならないのが大変です。
とにかく困ったら人に訊くことです!
− 今の生活について教えてください。
私の場合、実技のレッスンは週1回90分で、週一回大ホールで弾き合いがある上、年に2回発表会、その他オケのバイトも沢山あります。
また、オーディションを受けると個人演奏会が出来たりなど、日本にいた頃に比べると人前で弾く機会がものすごく増えました。
学校の中で受けることの出来る講習会もあって、それらは勿論お金は掛かりません。
これまでにレジス・パスキエ、ペーター・ウィスペルウェイ、ジュリアード・カルテット、エベーヌ・カルテット、アルテミス・カルテットなどなど、彼らの演奏会を聴いたり講習会を受けたりしました。
誰がいつ来るかは半年前くらいにならないと分からないので、運もあります。
コンクールを受けたり講習会、演奏会に行ったりと、とにかく充実しています。
音楽だけでなく、建物や景色、実際に過去に作曲家達が見て来たであろうものを見ることにより得るものも多いと思います。
それからヨーロッパは地続きなので、他の国にも楽に行けるというのがかなり魅力的です。
例えば、フランスに日帰りでレッスンに行くことも出来るんです。
ただ、日本の常識は全く通用しないところもあるので、至る所で「日本ではこうなのになんで駄目なの!」と思わないで、頑張って慣れることが必要でした。
が、そうすることによりその国の文化や人間性も学ぶ事が出来ました。
− 実技以外の授業はいかがでしょう?
私は桐朋の高校を卒業して、大学からドイツに来ましたが、ソルフェージュ、音楽理論は全く困ってません。
ソルフェージュはものすごく簡単です。桐朋の高校入試レベルが出来れば大丈夫です。
音楽理論はやり方が少し違いますがドイツ語を勉強して、桐朋の高校で習った基礎が入っていれば大丈夫です。
− 学費や生活費はどのくらい払っていますか?
入試費用は大体50〜100ユーロです。
入学金は要らなくて、私の学校は授業料が州の制度により無料になったので、学校の設備の為と、街中の電車定期券の為に半年に1回100ユーロ払っているだけです。
学内のコンクールが色々あって、賞金が1000ユーロだったり3000ユーロだったりします。
生活費は街によりますが、私の街は大体家賃200ユーロから400ユーロ。学生寮もあります。
1ヶ月にかかるお金、家賃ガス食費電話、あと演奏会に行ったりなど、全部込みで大体800〜1000ユーロくらいかかっているでしょうか。
奨学金も色々あるみたいです。
私はひとつ先生から紹介してもらって、書類を揃え、先生の推薦をもらって受給が決まりました。
そこから月330ユーロもらっているので、上記の値段マイナス330ユーロで生活しています。
− 今の桐朋生への助言をお願いします。
とにかく語学をやっておくこと。
そして何よりも、早く行くことです。
早く行けば行く程に、吸収出来ることが沢山あります。そして、環境に早く慣れる事が出来ます。
現地に語学学校もあるので (学校の要項も現地の言葉若しくは英語ですが)、なんとかなります。本当になんとかなります。
外国の先生とコンタクトを取るのが、一番勇気がいると思うんですが、日本みたいにそんなに畏まって文章を考えなくても大丈夫で、「とにかくレッスンしてください」と自分が何をしたいかを相手に伝えられればオッケーです。
外国語のメール、手紙の書き方はネットで調べれば出てきます。
いきなり留学するのが怖かったら、例えばまずは海外の講習会、コンクールに行ってみたりしてはどうでしょう。
これまた全部ローマ字で書いてあるホームページを見ると本当に手続きが面倒臭いと思ってしまいますが、最初は辞書を片手に頑張ります。
日本から飛び出すのは準備も大変だし、手続きの段階から何かしらトラブルが発生するし、たしかに何回か本当に困って泣くことになります。
でも、上手くいく道が必ずあるので、あとまわしにしないで、とりあえずやってみることだと思います。
ただ、行く前に出来る限りの準備はしておくこと。しつこいくらいコンタクトを取って、分からないことは全部質問することです!
2014年5月には、横浜でデビュー・リサイタルを成功させた森園さんの、更なる活躍を期待します。
たくさんの激励の言葉をありがとうございました!
※ここに記載したインタビューは、留学生個人の提供する情報で、現在の実勢と必ずしも一致するものでない可能性もあります。実際の留学に際しては、自身の責任において事実関係を確認してください。
インタビュアー・文責/大島 路子